「放射線授業実践報告会(中学版)」を開催しました。


当協会では、基礎的な放射線知識の普及、教員の放射線教育の取組みの支援を目的として、中学理科教員を主な対象とする授業実践報告会を、6月28日(土)、東京・虎ノ門で開催しました。今回は、昨年6月の第1回実践報告会(中学版)、今年3月の第2回実践報告会(高校版)に続く、第3回報告会でした。

報告会には、小中学校教員のほか、大学、研究所、団体、企業等の外部支援者を含め約50人が参加し、発表に熱心に耳をかたむけました。

3人の先生から放射線授業実践の発表がありました。

一人目は、東京都中野区立南中野中学校の高田太樹先生でした。高田先生は、東日本大震災後、文部科学省「放射線副読本」作成委員として、教える側の立場から、解説の難易度等について意見を述べられました。文部科学省が実施した福島での宿泊研修に参加し、放射線量を測定したり、飯舘村長のお話をうかがったりした経験をもとに、生徒に授業をされました。先生は被災地の様子を写真にとり生徒に見せる等して、事実を伝えるようにしたつもりだったが、原子力発電所についてむやみに怖がらなくてもよいという自身の考えが(口に出さなくても)生徒の気持ちに影響したように感じられたそうです。

二人目は、福島県郡山市立郡山第一中学校の園部毅先生でした。園部先生は、震災後、生徒たちが、放射性物質が体に付いたりするのを防ぐため、暑さを我慢してウインドブレーカーを着たりしている様子をみて、放射線について学校できちんと教えることが大事と感じ、前任の福島大学付属中学校で授業をされました。先生はまた、チェルノブイリ原子力発電所事故で被害を受けたベラルーシ共和国訪問を通じて、子どもが学校で学んだ放射線知識が親に伝わることによって、地域社会全体の放射線知識レベル向上につながり、それが風評被害低減にもつながるという考え方に注目されたそうです。

三人目は、郡山市教育委員会の児玉剛明先生でした。児玉先生は、前任の福島県郡山市立郡山第四中学校時代に、震災後設けられた、郡山支部中学校理科教育研究会理科部会の「放射線教育推進委員会」委員となり、保護者、教員を含む放射線公開授業を実施されました。授業では、「放射性物質の除染とその効果」について、実験で確認しました。授業を参観した、原子力発電所事故の影響を受けた地域の中学校の先生から、自分たちの学校ではこの授業はできないと発言があったことから、先生は、とくに放射線については地域によって扱える内容に違いがあり、郡山市だからできた授業だと思っているとのことでした。

また、東京大学環境安全本部の飯本武志准教授から特別講演として、放射線防護の基準値は“値ごろ感”を示すものであり、サイエンスに通じる、と説明がありました。一方、(放射線を使うか使わないかという)判断を迫ることは、ソーシャルサイエンスの範囲であり、サイエンスを学ぶ授業と区別するべきであるとはっきりいわれました。

当協会としては、先生方への効果的な外部支援ができるよう、実践報告会の開催等を通じて教育現場との情報交換を続けていきたいと考えています。

以上


 

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